「庭の物置とエアコンは、そのまま置いていこうと思っています。でも、買う方は片づけてもらえると思っているようで……」
売買契約に向けた打ち合わせで、お客様からこんなご相談がありました。
売主様にとっては、まだ使える物置とエアコンです。次の住まいには持っていかないため、買主様に使ってもらえればと考えていました。
一方、買主様は庭を広く使い、エアコンも新しく購入する予定だったそうです。
「使えるものを残す方が親切だと思ったんですが、こちらで全部処分しないといけないのでしょうか」
中古住宅の売却では、物置やエアコンを残すか撤去するかを、一律には決められません。対象を一つずつ確認し、状態、撤去範囲、費用負担、作業期限まで合意して書面に残すことが大切です。
今回は、双方の考えを聞きながら、引き渡す状態を具体的に整理しました。
「まだ使える」と「使いたい」は同じではない
現地で確認した物置は、園芸用品やタイヤの保管に使われていました。扉は開閉でき、売主様は今後も使えると考えていらっしゃいました。
「買ったときは結構な金額だったので、捨てるのももったいなくて」
そのお気持ちは自然です。ただ、買主様には小さなお子様がいて、庭に遊べる場所を確保したいという希望がありました。
物置があることを便利に感じる方もいれば、置かれている場所を別の用途に使いたい方もいます。
エアコンも同様です。売主様には十分使えていても、買主様は省エネ性能や設置年数を気にされるかもしれません。
まずは「残してあげる」「片づけてくれるはず」という前提を外し、双方の希望を確認することから始めました。
付帯設備表で、引き渡す物を一つずつ確認する
次に、仲介担当者と一緒に付帯設備表を確認しました。
中古住宅の売買では、エアコンなどの設備について、引き渡す対象や故障・不具合の状況を確認するために使います。物置など、書式に該当欄がなければ、別の欄や一覧を使って対象を明確にします。
今回のエアコンは全部で3台ありました。
「エアコンは撤去」とだけ書くと、どの部屋の何台を指すのか分からなくなるため、「リビング1台」「1階和室1台」「2階洋室1台」と設置場所を分けました。
物置も、庭のどこにあるものか写真と位置図で確認します。
付帯設備表の「有・無」などの意味は、使用する書式によって確認が必要です。口頭の説明と書類の記載が食い違わないよう、担当者から双方へ説明してもらいました。
残すエアコンは、状態も伝える
話し合いの中で、買主様から、
「リビングのエアコンは、比較的新しいなら残してほしいです」
という希望がありました。
そこで、製造年や型番、設置時期、修理歴、リモコンと説明書の有無を確認しました。
実際に操作すると冷風は出ましたが、それだけですべての機能や将来の動作まで保証できるわけではありません。
確認した日と範囲を記録し、分からないことは不明として伝えます。売主様が気づいている異音や水漏れなどがあれば、その情報も整理します。
「今動いているので大丈夫、とだけ言わない方がいいんですね」
残すことへの合意と、故障した場合の取り扱いは別の確認事項です。引き渡し前後の不具合にどう対応するかも、契約内容とあわせて確かめました。
物置の撤去は、中身や基礎まで確認する
物置については、買主様が撤去を希望されました。
ここで確認したのは、「物置を撤去する」という言葉に、どこまでの作業を含めるかです。
中に残っていた工具や園芸用品、本体を支えるブロック、地面に固定するための部材など、現地で一つずつ確認しました。設置状況によっては、解体や基礎の撤去、撤去後の整地が必要になる場合もあります。
売主様は、
「本体を運び出せば終わりだと思っていました。下にあるものも確認が必要なんですね」
と驚かれていました。
今回は業者に現地を見てもらい、中身の処分、本体の撤去、足元のブロックの撤去を含めた見積もりを依頼しました。
庭をどの状態にして引き渡すかも、双方で共有します。作業範囲が分かれば、費用についても具体的に話し合えます。
費用と作業日は、見積もりを見て調整する
売主様が特に心配されていたのは、撤去費用でした。
「家の売却代金とは別に、どれくらい必要になるのか分からなくて」
そこで、物置とエアコンの費用を分け、作業内容が分かる見積もりを取りました。
エアコンは、室内機だけでなく室外機や配管の扱い、配管を外した穴の処理なども確認します。物置についても、処分する中身の量や搬出方法によって条件が変わります。
見積もりをもとに協議した結果、今回の事例では、売主様の負担で物置とエアコン2台を撤去し、リビングの1台を残すことで合意しました。
これは今回の話し合いによる結論です。別の取引でも同じ負担になるとは限りません。
作業日は引き渡し直前に詰め込まず、完了後に確認できる時間を確保しました。
合意した後は、勝手に変更しない
残す物と撤去する物が決まったところで、内容を書面にまとめました。
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残す物の設置場所・数量・確認できた状態
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撤去する物と作業範囲
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撤去費用を負担する人
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作業期限と完了確認の方法
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不具合や予定変更があった場合の連絡方法
売主様からは、
「照明やカーテンも、今のうちに確認した方がいいですね」
というお話がありました。
そこで、室内や庭をもう一度見て回り、ほかに認識がずれそうな物がないかも確認しました。
合意した後に「やはり持っていきたい」「使えるので残したい」と希望が変わった場合は、先に担当者へ連絡し、買主様と再調整します。
引っ越し業者にも対象を伝え、残す予定の物を誤って運び出さないようにしました。
同じ引き渡し状態を思い描けるようにする
撤去作業の完了後、物置があった場所と、エアコンを外した箇所を確認しました。残すエアコンのリモコンと説明書も、引継ぎ資料にまとめます。
売主様は、片づいた庭を見ながらこう話されました。
「最初は、使える物を処分してほしいと言われた気がして、少し引っかかっていたんです。でも、次の暮らし方が違うんですよね」
物置やエアコンをめぐる行き違いは、どちらかが悪いから起きるとは限りません。互いに違う引き渡し状態を想像していた、という場合もあります。
残すか撤去するかに加えて、状態、費用、期限まで具体的にする。今回の話し合いは、売主様と買主様が同じ完成形を思い描くための時間になりました。