「川尻に土地を持っているんですが、前の道路が狭くて。こんな場所でも、家を建てたい人に買ってもらえるんでしょうか」
査定のご相談をくださったお客様は、土地そのものよりも、前面道路を気にされていました。
以前はご家族が暮らしていた家があり、現在は更地になっている土地です。道路は車同士がすれ違うには余裕がなく、周囲にも昔からの住宅が並んでいるとのことでした。
「近所の人から、道が狭いと新しく家を建てられないことがあると聞いたんです。前に家があったから大丈夫だと思っていたんですが、急に心配になって」
道路の条件は、土地の売却を考えるうえで大切な確認事項です。ただ、見た目の狭さだけで建築できるかどうかは判断できません。
まずは現地を拝見し、道路の資料と照らし合わせながら調べることにしました。
道があることと、建築に使える道路であること
現地に着くと、土地の前には舗装された道路が続いていました。日常的に車や人が通っていて、見た目には普通の生活道路です。
「こうして道路につながっているのに、建てられない場合もあるんですか」
お客様の疑問は、もっともでした。
建築を考える際には、その道が「建築基準法上の道路」に該当するかを確認します。道路のように使われている場所でも、必ずしも法律上の道路として扱われるとは限りません。また、公道か私道かという所有・管理の区分と、建築基準法上の道路の区分は、分けて調べる必要があります。参考:板橋区「建築基準法の道路種別調査」
「まず、どんな扱いの道路なのかを確かめましょう。幅を測るだけでは分からない部分があります」
そうお伝えし、現地では道路の形や敷地とのつながりを確認しました。その後、役所の担当窓口で、道路の種別や指定の状況を調べることにしました。
幅が4メートル未満でも、すぐに結論は出せない
お客様が特に気にされていたのは、道路の幅でした。
「4メートルないと駄目だと聞いたんですが、ここは足りない気がします」
建築基準法上の道路は、原則として幅員4メートル以上ですが、一定の条件を満たし、特定行政庁が指定した幅員4メートル未満の道も、道路として扱われます。その一つが「2項道路」と呼ばれるものです。参考:国土交通省「建築基準法上の道路」
今回の架空の事例では、役所で調べた結果、前面道路はこの2項道路に該当することが分かりました。
「では、道が狭くても、家を建てられる可能性があるんですね」
「はい。ただし、道路に合わせて敷地を後退させる『セットバック』など、確認する条件があります」
道路の種類が分かったことで、次に調べる内容が具体的になりました。
セットバックすると、土地の使い方が変わる
2項道路では、一般に道路の中心線から両側に2メートルの位置を道路の境界とみなし、建築時にはその線まで後退する必要があります。向かい側が川や崖などの場合には扱いが異なるため、個別の確認が必要です。参考:国土交通省「2項道路とセットバック」
お客様には、紙に道路と土地の簡単な図を描いて説明しました。
「例えば、確認された道路の幅が3メートルで、中心線から両側へ同じように後退する条件なら、こちら側は50センチ後退する計算になります。ただし、今見えている舗装の真ん中が、そのまま正式な中心線になるとは限りません」
「道路の端から適当に測ればいい、という話ではないんですね」
そのとおりです。後退する位置や面積を確定するには、道路境界などの確認が必要になります。
また、後退部分は建物を建てるために自由に使える場所ではありません。販売時には土地全体の面積だけでなく、セットバックによって建築に使える範囲がどう変わるかを伝えることが大切です。
お客様も図を見ながら、
「買う方が間取りを考える前に、ここを説明できるようにしておいた方がいいですね」
と納得された様子でした。
道路に接している長さも確認する
道路の種類と幅に加えて調べたのが、敷地が道路に接している長さです。
都市計画区域などで接道規定が適用される場合、建築物の敷地は、原則として建築基準法上の道路に2メートル以上接している必要があります。建物の用途や規模などによって、条例による追加条件が設けられる場合もあります。参考:建築基準法第43条
今回の土地は、道路に面した部分に一定の長さがありました。ただ、現地で広く見えることと、資料や境界に基づいて接道条件を確認できることは別です。
測量図などの資料を確認し、必要に応じて専門家にも調査を依頼する。その手順まで含めて、お客様と整理しました。
「昔ここに家があったことだけで、次も同じように建てられると考えない方がいいんですね」
以前の建物の存在は参考になりますが、現在の条件でどのような建築ができるかは、改めて確認する必要があります。
建築の条件と、暮らしやすさを分けて考える
調査では、法律上の条件とあわせて、実際の使い勝手も確認しました。
車で曲がって入れるか。敷地に駐車するとき、何度も切り返す必要がないか。工事車両が入る際に、施工方法の検討が必要になりそうか。
建築が可能でも、道路の状況によっては、建物の配置や工事の進め方に影響することがあります。
お客様は、
「建てられると分かれば安心だと思っていましたが、買う方は毎日の出入りも気になりますよね」
と話されました。
そこで、販売に向けては、道路の種別、幅員、接道の長さ、セットバックの見込みを整理し、車の出入りなどは現地で確かめてもらえるようにする方針を立てました。具体的な建築計画については、購入希望者の建築会社と行政への確認が必要であることも伝えます。
「狭いから売れない」を、説明できる条件に変える
調査内容をご説明したあと、お客様からこんな言葉をいただきました。
「道が狭いというだけで、売るのは難しいと考えていました。何を調べればいいのか分かると、少し落ち着きますね」
道路が狭い土地は、確認することが増える場合があります。それでも、見た目だけで売却や建築の可能性を決めつける必要はありません。
どの種類の道路なのか。幅はどれくらいか。敷地はどのように接しているか。そして、建築にあたってどんな条件があるのか。
川尻の土地での査定は、その一つひとつを調べ、購入を検討する方へ説明できる形に整える時間になりました。