「川尻にある家を売りたいんですが、駐車場が1台分しかないんです。やっぱり、それだと売りにくいですよね」
査定のご相談をいただいたとき、お客様が最初に気にされていたのは、建物の古さよりも駐車場のことでした。
ご実家として長く使っていたお家で、道路に面した駐車スペースは1台分。隣には庭があり、道路との境にはブロック塀、庭の奥には物置が置かれているとのことでした。
「今は夫婦で1台ずつ持っている家庭もありますよね。うちは2台置けないから、その時点で候補から外れてしまうのかなと思って」
確かに、購入を検討する方にとって、車を何台置けるかは大切な条件です。ただ、現在の駐車台数だけで、その家の可能性が決まるわけではありません。
まずは現地で、庭や塀、物置の配置を確認することにしました。
庭があれば、その分を駐車場にできる?
査定当日、お客様に案内していただくと、駐車場の横には植木のある庭が広がっていました。
道路沿いにはブロック塀が続き、門扉から玄関までの通路があります。庭の奥にある物置には、園芸用品や工具などが入っていました。
「この庭をなくせば、もう1台くらい入りそうですよね」
お客様のおっしゃるとおり、車を置く場所を増やせる可能性はありそうでした。ただ、見た目で空いている場所に車が収まることと、日常的に使える駐車場になることは別です。
確認したいのは、車そのものの大きさだけではありません。道路から出入りできるか、切り返す余裕があるか、ドアを開けて乗り降りできるか。玄関まで歩く通路も必要です。
「ここに車を置くと、玄関へ行くときはどこを通るでしょうか」
そうお聞きすると、お客様は庭と玄関を見比べながら、
「ああ、車が入ればいいと思っていました。人が通る場所も残さないといけませんね」
とおっしゃいました。
そこで、庭の広さだけを見るのではなく、道路から車を入れ、停めて降り、玄関まで歩く流れを一緒に確かめました。
塀を一部撤去すれば、入口を広げられるか
次に確認したのは、道路側のブロック塀です。
庭側に駐車スペースを設けるなら、車が出入りするための開口が必要になります。今回の配置では、塀の一部を撤去して入口を広げる案が考えられました。
ただし、塀を取り除くだけで工事が終わるとは限りません。
道路と敷地の高低差、側溝の位置、電柱などの障害物によって、出入りのしやすさは変わります。道路側の工事を伴う場合には、道路管理者などへの確認が必要になることもあります。また、残す塀の安全性や、撤去後の端部をどう仕上げるかも検討が必要です。
お客様は、道路に立って庭を見ながら、
「入口を広くすれば簡単だと思っていましたが、道路とのつながりまで見ないと分からないんですね」
と話されました。
この段階では、駐車場を増やせると断定するのではなく、「塀の一部撤去を含めて、施工業者に確認する価値がある」と整理しました。
物置を動かすと、使える奥行きが変わる
庭の奥にある物置も、配置を考えるうえで大きなポイントでした。
物置を残したままでは、車を置けそうな場所の奥行きが限られます。一方で、撤去や移設ができれば、配置の選択肢が広がる可能性があります。
「これは父が使っていた物置で、今はほとんど開けていないんです。売るなら処分してもいいと思っています」
お客様のご意向を伺い、中に何が残っているかも確認しました。
物置を動かすといっても、本体だけの話ではありません。中身の片づけ、基礎の撤去、移設先の確保などが必要になる場合があります。古くなっていれば、移設して使い続けられるかも確認しなければなりません。
今回は、物置を残す案と撤去する案の両方で、使える範囲を見比べることにしました。
「物置があるから無理だと思っていました。でも、残すかどうかも自分たちで決めていいんですね」
長く暮らしてきた家ほど、庭も塀も物置も「そこにあるもの」として考えがちです。一つずつ役割を確かめることで、敷地の見え方が変わってきました。
「2台置ける」の中身まで考える
現地では、車を横に並べる案だけでなく、縦に並べる案も検討しました。
ただ、縦列駐車では、奥の車を出すために手前の車を動かす必要があります。ご家族の出勤時間や車の使い方によっては、その手間が負担になるかもしれません。
また、軽自動車なら使いやすくても、大きな車では出入りや乗り降りが難しい場合もあります。
そのため、販売時に伝える内容も、単に「駐車2台可」とするだけでは不十分です。どの程度の車を、どのような配置で停める想定なのか。工事が必要なのか。確認できた条件を具体的に示す必要があります。
お客様にも、
「増設の可能性は調べられますが、今の状態で2台停められると案内することはできません。寸法や工事内容を確認してから、伝え方を考えましょう」
とお話ししました。
工事をしてから売るべきか
配置の話が進むと、お客様からこんな質問がありました。
「それなら、先に庭と塀を工事して、2台停められるようにしてから売った方がいいですか」
駐車スペースが増えることで、検討する方が増える可能性はあります。ただし、工事費用をかけた分だけ、売却価格が上がるとは限りません。
庭を残したい方もいれば、車は1台で十分という方もいます。購入後に、自分の車や暮らし方に合わせて工事をしたい方もいるでしょう。
そこで今回は、まず施工業者に増設の可否と工事範囲、概算費用を確認し、その内容を踏まえて売り方を決めることをご提案しました。
工事を先に行う方法もあれば、現在の状態で販売し、確認済みの増設案を検討材料として紹介する方法もあります。お客様が先に負担する費用と、購入希望者にとっての分かりやすさを、両方考えるためです。
「1台しかない」から、確認できることを探す
査定を終えるころ、お客様はもう一度、道路から庭を眺めていました。
「駐車場が1台だから、この家は売りにくいと決めつけていました。まず、増やせるかどうかを調べればよかったんですね」
今回の訪問で確認できたのは、増設を検討する余地があるということです。実際に何台分を確保できるか、どの工事が必要かは、さらに調べる必要があります。
それでも、お客様の悩みは「駐車場が少ないから売れないかもしれない」という漠然とした不安から、「庭・塀・物置をどうすれば、使える場所が増えるか」という具体的な検討に変わりました。
川尻の家に限らず、駐車場の台数が気になるときは、今の区画だけで判断せず、敷地全体の使い方を確かめることから始められます。
庭の広さ、塀の位置、物置の配置。そして、道路から玄関までの動き。その一つひとつを確認することが、売却時に伝えられる可能性を見つける第一歩になります。